「瓦礫を全国で処理しよう」と呼びかけたり、その意見に賛同している方は、国の「バグフィルターでほとんどの放射性物質を取り除けるから周辺には漏れない」を真正直に信じてしまっていると思います。
でも、そのバグフィルターについては調べていくと、バグフィルターの性能以前に、「時々破損事故を起こして、穴があいた状態に気づかずに運転してだだもれになった事が過去に何度もある」との事。
どこの焼却炉でもこのようなケースが必ず起こるわけではないでしょうが、全国各地できちんと対策せずに処理をすると、おそらく中にはバグフィルターの破損に気づかずに運転を続けて放射性物質やアスベスト、有害化学物質を含んだ灰をだだもれさせて、周囲を汚染させてしまうところも出てくるでしょう。
これは本当に取り返しのつかない事になります。
以下にバグフィルターの性能や事故についてのリンクを貼りました。
(文章が長いのもあるので、リンク先は後で改めて読んでください。)
「バグフィルター 破損」などのキーワードで検索すると、他にもぼろぼろ出てきます。
・バグフィルター1
http://papamamamesen.jugem.jp/?eid=155
・バグフィルターは安全か?~清掃局職員の方とのやりとり
http://togetter.com/li/160308
・バグフィルタや焼却炉の排ガスに関する森口先生とのやりとりのまとめ
http://togetter.com/li/247481
内容をかいつまむと・・・・
・バグフィルターは取り扱いや寿命の問題で、自治体や民間企業が所有する焼却炉では時々破損事故(穴があく等)が起きてしまっている。
・高い温度のまま排ガスをバグフィルターに通過させると穴があく事がある。かといって低い温度だと目詰まりを起こす事がある。(排ガスの温度調整は結構難しい)
・破損事故の中には2001年の野田市みたいに、「バグフィルターに穴が空いてるのに気づかず、長期間だだもれになっていた」ケースがある。
という感じです。
「バイパス」の話もおまけにありますね。
本来なら排ガスは必ずフィルターを通さないといけないのですが、炉の運転開始時は排ガスの温度の調整が難しかったり、また他の要因などで、たまにフィルターを迂回して生で排気してしまう事もあるそうで。
これは地域によっては排ガスをバイパスして排出するのを禁止してるところもあるようですが、容認してしまってるところもあり、事業者が「ばれないから」と短時間でしょうがそのまま生で排出してしまってる事もあるようです。
フィルターに破損が起きた場合は即座に排ガスの異常を検知して運転を止めさせる事ができるところもあるようですが、これも全部がそうではなく、大半の焼却炉では排ガスを一定間隔(数ヶ月)単位で収集・検査しているとの事。
当然ですが、異常があった場合はこれでは発見がかなり遅れます。
前述の野田市のケースでは、排ガスの検査結果が出るまで半月ほどかかり、しかもその排ガス検査も一定間隔をあけて行っていたため、実際は数ヶ月間ほどだだもれになっていたようです。(野田市については以後リアルタイム検査機能を搭載したようです)
あとバグフィルターの話ではないですが、「焼却炉は完成から年月が経つほどガタがくる。内部の一部は定期的に改修・補修などしているが、それでもところどころ漏れたりしてる。」との話もありますね……。
完成から年月が経った焼却炉はそういう危険があるので引き受けさせない方が良さそうです。
(でも国はそういうのをまともに考慮してないでしょうね・・・)
瓦礫の全国処理を容認してる方、呼びかけてる方は、「バグフィルターで放射性物質をほとんど捕らえられるので周囲には漏れない」と思いこんでるようですが、そのそもそもの前提がおかしいとしたらどう思うでしょう?
「バグフィルターは放射性物質を捕らえる能力に疑問が持たれている。しかも時々破損事故を起こして、穴が開いた状態に気づかずにだだもれになった事が過去に何度も起きている」と知ったら、それでもあなたは「日本全国で瓦礫を処理しましょう」という意見に賛同したり、呼びかけを続けられますか?
私だったらとてもじゃないですが「無理」です。
<バグフィルターの破損問題は広域処理とはまた別に考えないといけない>
この話は「だから全国で処理はやめましょう。現地で処理しましょう。」というとこで話を終わらしてはいけないと思います。
「すでに東京や山形みたいに引き受けを開始してるところはどうするの?」とか、「広域処理するかどうか以前に、8割以上を現地処理する事は元から決まっているが、では現地で放射性物質の漏出が起きないようにしないといけないのでは?」まで話を広げないといけないでしょう。
また、関東や東北では一般ゴミの焼却炉の灰から結構な量の放射性物質が検出され続けているため、関東や東北などでは瓦礫を焼却してないところでも「対策」を急がないといけないでしょう。
私は焼却炉や埋立地周辺に多くのポイントを設けて一、二週間単位で土壌や降下物検査をする事を提案しましたが、それとは別にフィルター類がもし破損した時の事を考え、排ガスのリアルタイム線量検査もやるべきなのでは、と思うようになりました。前述のリンク先の一つでもこれは提案されていますね。
フィルターに穴があくなどで想定外に大量の放射性物質が漏れた場合は、煙突から出て拡散する前の段階で排ガスをリアルタイムに線量検査しておけば即座に異常を発見できるのではないでしょうか。
フィルターを通った後~煙突の先端までの間(煙道)に、線量計を設置してリアルタイムで線量計測を行うと。(分岐してる場合は分岐前に設置したり、分岐後に複数設置したり)
データについてはリアルタイムで一般公開させるようにしないと、事業者の中には後でデータを改竄したり、漏れてても隠蔽してしまうところが出てくるでしょう。
排ガス検査をやれば、周辺の土壌検査や降下物検査はもうやらなくていいかというと、これについてはやはりやっておいた方がいいと思います。
周辺汚染の発見については、何段階も異常を検知する機構を設けておいた方がいいでしょう。
(異常を検知する機構が少ないと、想定外なルートから漏出が起きていた場合は気づかずに長期間放置されて汚染を進めてしまう事があるため)
「バグフィルターの異常を検知する機能」がついても、結局穴が開いたら停止するまで漏れてしまうわけです。
焼却炉は緊急に停止する事は難しく、停止まで結構時間がかかるようで、そのままでは異常時にそれなりの量漏出してしまうと。
すでに被災地の瓦礫を受け入れてる山形や東京の各施設や、これから受け入れをしてしまうところ、そして被災地の処理場については、「フィルターを多重構造に改修させる事(新設の場合は多重構造式に設計させる事)」と、「フィルターの定期検査の間隔を短めにする事」、「フィルターの交換頻度の短縮」を義務化しないといけないでしょう。
コストがかかるでしょうが、これをやらないところは引き受けるべきではない。
既存の施設にフィルターを新たに追加するのは難しいかもしれませんが、被災地で建設中の物なら設計段階でフィルターの多重化をさせるのは難しくないでしょう。
また、すでに被災地で完成した仮設焼却炉についても、きちんと多重構造にしているか改めて確認する必要あり。
<可燃物の焼却炉や、バイオマス発電の炉の「寿命」の話>
バグフィルターとは話がずれるのですが、私が仮設型の焼却炉を現地で多く作って処理した方がいいと思っている理由としては、他にも「炉の寿命」の問題があるからです。
内陸部の瓦礫はともかく、沿岸部で津波により海水をかぶってしまった瓦礫については、色々な化学物質や塩分がかなりしみこんでしまっているわけです。
全国各地の焼却炉でそれらを処理すると、各々の自治体や民間が所有している炉の寿命を縮める事になってしまいます。
(これは一般のゴミ焼却炉だけでなく、バイオマス発電用の炉でも同様に寿命を縮める事になります。山形や東京の一部バイオマス発電プラントがじゃんじゃん燃やしてしまってますが…)
想定より早く炉の寿命が来て大幅に改修したり立て直すはめになると、当然ですが各々の自治体や国、民間業者にとっては「余計な負担(コスト増)」となるわけです。
しかし、元から長期間(数十年)の運用は考慮していない仮設型の焼却炉の場合は、三年+α程度の運用を予定しており、多少炉の寿命が縮んでも寿命が来るよりずっと前に役目を終えて解体する事になるから問題は無いのです。
(解体時の放射性物質や化学物質のしみこんだ炉の廃材の処理については、また別に考えないといけないでしょうが)
これは現地の焼却炉についても当然考慮すべき話で、今現在おそらく沿岸部の瓦礫は岩手や宮城、福島(原発近圏の瓦礫はのぞく)、茨城などでは一般のゴミ焼却炉でも処理してしまっていると思います。
でもそれでは炉の寿命をどんどん縮めてしまって、想定よりも早く改修したり立て替えたりするはめになります。
津波で発生した瓦礫に関しては、一般の焼却炉ではなく、長期の運用はしない仮設型焼却炉でのみ処理するようにした方がいいでしょう。
<「排水」によって引き起こされる汚染問題>
あと広域処理については、もう一つ「排水」の事も考慮する必要があると思います。
焼却炉や、焼却灰を引き受けてセメントや非鉄金属などの資源化を行う処理設備の清掃の際には汚水が発生するのですが、排水前に放射性物質をできるだけ除去してから放出するようにしないといけません。
・排水から15倍濃度セシウム 東京湾に放流1カ月半 市原の廃棄物処理会社
http://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/ff82ac3be273dfb6453a03db23371931
上記のニュースは結構見た方も多いでしょう。市原エコセメントという業者がセメント製造設備を清掃する際に発生した汚水を東京湾に1日約300トンペースで放出していたのですが、定期検査で1000ベクレル/lほどの汚染が発見され操業を停止した事がありました。
最初に異常を発見してから1ヶ月半近く放出を続けており、しかも実際は検査前から異常はあったかもしれないとの事で、もっと長期間基準値を大幅に越えた汚染水を放出し続けていたようです。
全国で瓦礫を引き受けたところでは、焼却炉や、焼却灰を資源化する設備を清掃する際に発生する汚水についてもきちんと考慮しないと、同じように河川や湾岸の汚染を引き起こすはめになります。
(これは被災地で処理する場合も同様です)
排水についてはゼオライトやその他の物質などでできるだけ放射性物質を除去してから放出するようにしないといけないでしょう。
ちなみに上記のニュースでは、市原エコセメントでは「搬入する灰の汚染度を1000ベクレル/kgまでと制限していた上で、さらに放出する排水はあらかじめゼオライトで放射性物質を減らしていた」との事。「一回浄化処理をしたから大丈夫だろう」と思っていたら、実際はそうではなかったと。
この事例を鑑みると、一度の浄化処理だけではなく何回も浄化処理を繰り返してから放射性物質の濃度をできるだけ薄めて放出するようにしないといけないようです。
また、市原エコセメントの例では検査の頻度が空いていたため汚染水の放出を長期化させてしまいましたが、こういう事態を回避するには、各施設に簡易測定器(線量ではなくベクレルを計測できるやつ)を導入させて一日数回の頻度で排水中の放射性物質検査をするよう強制しないとダメですね。
基準値も厳しめの設定にした方がいいでしょう。
中には「ゼオライトなどによる除去ではなく水で薄めて基準値以下にして放出」をやるところも出てくるかもしれませんが、浄化でなく水で薄める場合は結局総量としての放射性物質放出量は変わらないので意味がありません。こういう方法はもちろんアウトです。
(浄化処理に使ったゼオライトの処理も考えないと……。放射性物質を吸着しまくって高汚染度になるでしょうし。)
ところで奈良の御所市にある南都興産というところが千葉や神奈川・他で引き受けに困っていた汚染焼却灰を受け入れて大量に奈良に運んでいた事が最近判明して話題になっています。
これについては奈良県とかの断りなく勝手に民間で引き受けしてたんですかね?(それとも奈良県の知事などは知っていた?)
この焼却灰は埋め立て以外にもし資源化もしていた場合は、同じように排水の汚染を引き起こしてる怖れがあります。
もし一部を地域の焼却灰資源化施設に搬入していた場合は、そこは「奈良だから排水の汚染は無いだろう」と思って今までと変わらず通常の処理をして放出していたかもしれません。
これについては、しっかり奈良県などが調査しておかないといけないでしょう。
対応如何では知事や市長が槍玉に挙げられる事になりそうです。
「なんで県は県内の業者が勝手に大量に受け入れしていたのを認識していなかったのか?」とか「知っていたなら、行政として汚染物の処理についてきちんと確認・指導していたのか?」など……。
考える事が多すぎて嫌になった方も多いでしょうが、環境汚染については「一度汚染を引き起こすと元に戻すのは難しい」ため、こういう風に色々予防策を考慮し、何重もの対策をしないといけないわけです。
「全国で瓦礫を引き受けよう」と安易に言ってる方やその意見に賛同している方は、ご自身の今までの発言はとりあえず置いておいて、今一度もう少し深く考えてみてはどうかと思うのです。
「自分の意見をどうしても捻じ曲げたくない」という方や、変に面子にこだわる方ならともかく、そうでない方は、瓦礫の広域処理問題を深く知れば知るほど、「うーん、そういう色々な問題があるのか……。ちょっと安易に瓦礫受け入れを呼びかけてしまったかな……。」と考えを改めた方もいるのではないでしょうか。
